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    透明性の確保、失敗を記録する…ヘッジファンドの帝王が44年のキャリアで得た教訓

    要約:世界最大のヘッジファンドの共同最高投資責任者(CIO)のかたわら、自身が学んだことを次の世代に伝える取り組みにも力を注いでいる。
    ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者兼共同最高投資責任者のレイ・ダリオ氏。

      ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者兼共同最高投資責任者のレイ・ダリオ氏。

      Hollis Johnson/Business Insider

    •   レイ・ダリオ(Ray Dalio)氏は、約1500億ドルの運用資産残高(AUM)を誇る世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツ(Bridgewater Associates)の創業者で共同最高投資責任者(CIO)だ。

    •   同氏はBusiness Insiderのポッドキャスト「This Is Success」に出演し、自身のキャリアにおけるいくつかの転機を振り返った。

    •   ダリオ氏が得た主な教訓とは、透明性を徹底することと、失敗から得た学びを体系化することだ。

      この2年ほど、レイ・ダリオ(Ray Dalio)氏の人生は過渡期にあった。

      現在もほとんどの時間を、自身が創設し、世界最大のヘッジファンドに育て上げたブリッジウォーター・アソシエイツ(Bridgewater Associates)の共同最高投資責任者(CIO)として過ごすダリオ氏だが、そのかたわら、自身が学んだことを次の世代に伝える取り組みにも力を注いでいる。

      ダリオ氏は、2017年に経営の一線を退き、同年に初の著書『PRINCIPLES(プリンシプルズ)人生と仕事の原則』(日本経済新聞出版社)を刊行した。2020年頃にも、自らの投資の基本原則を説いた著作を出版する予定だ。同氏がブリッジウォーターで成し遂げてきたことの根底には、彼独自の人生哲学がある。

      先ごろ、Business Insiderのポッドキャスト「This Is Success」に出演したダリオ氏は、1975年にブリッジウォーターを創設してからのキャリアを振り返り、いくつかの重要な局面について、またそこから得た普遍的な教訓について語ってくれた。以下にその教訓を紹介しよう。

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      1982年に挫折を経験。「知っていること」より「知らないこと」に目を向けるようになる。

    1982年、議会で証言を行うダリオ氏。アメリカが経済危機に向かっているとして、その根拠を述べた。

      1982年、議会で証言を行うダリオ氏。アメリカが経済危機に向かっているとして、その根拠を述べた。

      TED

      1975年にアパートの一室でブリッジウォーターを立ち上げたダリオ氏は、ほどなくその名を広く知られることとなった。

      ダリオ氏は1982年、その2年前に発した警告によって注目を集めた。アメリカの銀行は、ラテンアメリカの途上国に融資しすぎている、というものだ。ダリオ氏の見解は、当初は賛同を得られなかったものの、1982年にメキシコの大統領が、800億ドルにのぼる自国の債務が返済不能に陥っていると宣言したことで、その見解が正しかったことが明らかになった。800億ドルの債務のうち、200億~300億ドルは、アメリカの大手銀行が貸し付けたものだった。

      一転して、確かな見識の持ち主と目されるようになったダリオ氏に、アナリストばかりかアメリカ議会までもが注目し、次に起こることについて彼に意見を求めた。ダリオ氏ははっきりとこう主張した。アメリカ経済は、大きな低迷に向かっている、と。

      ところが、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切り、それによって株式市場は値を上げた。そのまま株価は何年も上がり続け、アメリカの歴史上でも特筆すべき強気相場を記録した。ダリオ氏の予想は外れたばかりか、彼が100%の自信をもって断言したことと正反対の結果になったのだ。

      「自分の考えが間違っていたことで、私は自分のお金を失い、顧客のお金を失い、従業員を全員解雇するはめになった。本当に無一文になった。家族の生活費を工面するために、自分の父親から4000ドルを借金しなければならなかった」とダリオ氏は振り返る。

      再び立ち上がる過程で、ダリオ氏は、これからもリスクをとることを避けたくはないが、それをするならもっと謙虚に、かつ新たな視点で臨むべきだと気づいた。「私は以前よりはるかにオープンな考え方をするようになり、視野を広げ、自分の知らないことに対処できるようになった」とダリオ氏は言う。

      「私が人生で成し遂げた成功はどれも、自分の知っていることが役立ったという以上に、自分が知らないことへの対処を知っていたおかげで得られたものだ」

      従業員のミスをきっかけに、失敗の記録をとるようになる。

    ブリッジウォーターでは、独自アプリ「ドッツ(Dots)」を使って、従業員が互いの仕事を採点し、評価しあう。ダリオ氏自身も評価の対象だ。

      ブリッジウォーターでは、独自アプリ「ドッツ(Dots)」を使って、従業員が互いの仕事を採点し、評価しあう。ダリオ氏自身も評価の対象だ。

      Bridgewater Associates via TED

      1990年代のはじめ、ダリオ氏の下で当時トレーディング責任者を務めていたロス・ウォラー(Ross Waller)氏が、実行するはずの取引を忘れるというミスを犯した。このミスによって「数十万ドル」の損失が出たと、ダリオ氏は振り返る。

      それでも、ダリオ氏はウォラー氏を解雇しなかった(ウォラー氏はその後も2004年まで在籍し、長く実りあるキャリアを築いた)。代わりにその出来事を、ブリッジウォーターに新たなアプローチを導入するきっかけとした。

      「エラーログ、今では『イシュー・ログ』(問題の記録)と呼んでいるツールを取り入れた。これは、すべての従業員が、何か失敗したときに必ずそれを書き留めることで、問題を目に見える形にし、そこから皆が学べるようにするものだ」と、ダリオ氏は説明している。

      ダリオ氏がこのような管理ツールを作成するのは初めてのことだったが、それ以降、ツールの数は増えていった。現在のブリッジウォーターでは、各従業員のスキルやパフォーマンスが記録され、それを全員が見られる人材の「野球選手カード」が作成されている。また、「ドッツ」(Dots)というiPadアプリを使って、会議中にリアルタイムでコメントを寄せられるようになっている。

      ウォラー氏の一件は、ダリオ氏にとって、失敗した人にも再挑戦のチャンスを与えるべきだというだけでなく、そうした失敗をうまく活用すれば、望ましいパフォーマンスを強化する新たな方法の発見につながることを知る機会となった。

      幹部たちとの厳しい対話から、「徹底的な透明性」を正しく貫くことが人間関係に役立つと学んだ。

    ブリッジウォーターで共同CIOを務めるボブ・プリンス(左)。ダリオ氏が最も信頼を置くパートナーの1人だ。

      ブリッジウォーターで共同CIOを務めるボブ・プリンス(左)。ダリオ氏が最も信頼を置くパートナーの1人だ。

      Neil A. Landino, Jr.

      1993年当時、ダリオ氏は、真実を率直に伝えるやり方こそ、ブリッジウォーターを円滑に運営する秘訣だと信じていた。しかし、その考えに誰もが賛同していたわけではなかった。

      同年のある冬の日、共同CIOのボブ・プリンス(Bob Prince)氏を含む上級幹部3人が、ダリオ氏にミーティングを申し入れ、それに先立ってメモをよこしてきた。そのメモには、ダリオ氏は仕事のできる人間で、チームのことも気にかけているが、その振る舞いは基本的に「イヤな奴」のそれだと記されていた。上級幹部たちは、ダリオ氏の言葉や態度は、従業員に「自分は無能で不必要な存在だと感じさせ、恥じ入らせるものだ」と指摘した。従業員たちは、「打ちのめされ、軽んじられ、抑圧されていると感じ、嫌な気持ちにさせられている」というのだ。

      ダリオ氏はこれにショックを受けた。そして、「互いに正直である」か、それとも、「誰もがハッピーである」かという、両立しそうにない二つの選択肢の間で妥協点を探った。ブリッジウォーターでは「徹底的な透明性」と同氏が表現するあり方が重要だが、節度が必要であるし、期待される範囲が設定されなくてはならなかった。

      「誰かとうまくいっていないときや、意見の食い違いがあるときは、そこで立ち止まろう。いったん問題は脇へ置き、より高い視点に立って、『われわれは互いにどう振る舞うべきか。一緒に仕事をする上で何を基本ルールとするのか、またそうするのはなぜか』を問うてみるといい」とダリオ氏は述べている。

      「それを経て、再び意見の相違に立ち戻り、お互いへの振る舞いに関して定めたやり方に沿って、解決を図るのだ」

      ブリッジウォーターの急成長で「原則」を書き留めるようになった。

    ダリオ氏は2017年、自身の仕事と人生の原則を説いた著書を刊行。2019年にはそのアプリ版をリリースしている。

      ダリオ氏は2017年、自身の仕事と人生の原則を説いた著書を刊行。2019年にはそのアプリ版をリリースしている。

      Ray Dalio/Principles in Action

      ダリオ氏はキャリアの初期に、ある種の投資行動は、マーケットの動きに合わせてプログラミングし、ソフトウェア化できることを学んだ。それによってコンピューターは、トレーディングに欠かせないツールとなり、結果としてもたらされた投資原則の集積は、ブリッジウォーターの武器となった。

      リーダーとして成長していくなかで、ダリオ氏は、同じアプローチが人間にも適用できると確信を持った。ブリッジウォーターは2006年、比較的小規模なブティック型運用会社の段階を終え、急成長の途上にあった。自社の企業文化を維持するべく、ダリオ氏は同社が守るべき信条をリストにまとめることにした。

      ダリオ氏はポッドキャストの中で、社員たちにいきなりルールブックを突きつけ、これに従えと迫ったわけではなく、すでに社内に存在したものを成文化したにすぎないと語っている。

      ブリッジウォーターには厳しい企業文化が存在し、決して万人向きでないことは事実だ。それでも、個人や企業レベルでの原理原則を記録しておけば、それらはいかなる状況にも役立つし、適応させることができると、ダリオ氏は考えている。

      「私が次世代に伝えたいすばらしいやり方のひとつは、人々に各自の意思決定のルールを書き留めさせることだ」とダリオ氏は述べている。ベスト・プラクティスからプロセスを導き出すことは、リスク管理にとっても、コミュニケーションにとっても、より良い結果をもたらすからだ。

      後継への引き継ぎに苦労したことから、焦点を絞ることと、人に任せることを学んだ。

    ダリオ氏は経営の一線からは退いたが、今なおブリッジウォーターで存在感を発揮している。

      ダリオ氏は経営の一線からは退いたが、今なおブリッジウォーターで存在感を発揮している。

      Ray Dalio/Principles in Action

      ダリオ氏とそのチームは、金融危機が迫っていると確信し、それに備えて計画を立てていた。そのため、2008年にリーマン・ショックが発生したとき、ブリッジウォーターは比較的良好な成績で乗り切り、おかげで大きな注目と多くの新規顧客を獲得した。2010年、ブリッジウォーターは創設以来最高の成績を記録した。

      そのころダリオ氏は、自身の仕事を後継に引き継ぐ計画を立てる時期に来たと考えていた。引き継ぎには2~10年の期間を費やすつもりだった。同氏は2011年にCEO職を退き、経営の指揮には、デイビッド・マコーミック(David McCormick)氏とグレッグ・ジェンセン(Greg Jensen)氏に共同であたらせることにした。ダリオ氏は自著の中で、ジェンセン氏は家族同様の存在だったため、同氏が共同CEOと共同CIOの職務をうまく両立できないとわかった時(ダリオ氏自身も2008年に直面した問題だ)、後の2016年に実施することになる組織再編は、自身がブリッジウォーターで下す最も残念な決断になることを覚悟したと明かしている。

      2016年に、ダリオ氏は新たな共同CEOとして、ジョン・ルビンスタイン(Jon Rubinstein)氏を任命した。しかし、ルビンスタイン氏はわずか10カ月後に退任。ダリオ氏自身がCEOに復帰した。1年後、ダリオ氏は今度こそ正しい引き継ぎ体制が整ったと判断し、2017年にCEOの座を退いた。

      ポッドキャストのインタビューでダリオ氏は、この経験からいくつかの教訓を得たと語っている。

      「次はこうなるだろうと予想を立てるのはいいが、それに賭けてしまってはいけない。何かを3回成功させたことがなければ、そのやり方を知っていると思うべきではない」とダリオ氏は話す。

      またダリオ氏は、経営の専門家ジム・コリンズ(Jim Collins)に助言を仰ぎ、事業承継には、それを監督するガバナンス理事会を設置する必要があることを学んだ。さらに、リーダーの視点や才能は、その人が経験したことのない役割にまで、いきなり発揮されるものではないことを学んだ。

      「ものの見方は人それぞれに異なることを、私は学んだ」とダリオ氏は語る。

      「本人がすでにやってのけていることでない限り、誰かが何かをやれると決めつけてはならないということも」

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      [原文:Ray Dalio started Bridgewater in his apartment and built it into the world's largest hedge fund. Here are 5 major lessons he's learned over the past 44 years.]

      (翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:山口佳美)

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